関経連レポート/コーポレートガバナンス・コード
コーポレートガバナンス・情報開示制度に関する研究
2015年以降のコーポレートガバナンス改革では、企業の持続的かつ中長期的な企業価値の向上を目的として、ROE経営(伊藤レポート)や資本コスト、株価を意識した経営(金融庁・東京証券取引所)が推進されてきました。こうした中で、企業の株主還元は2.8倍、利益は2.1倍まで増大し、結果として株価は最高値を更新し続け、2026年2月26日には59,322円を記録しました。そのため、株主の視点から見れば、コーポレートガバナンス改革は高く評価することができるかもしれません。
しかし株主還元や利益の急成長とは裏腹に、売上高や従業員・役員への分配、設備投資は伸び悩み、日本経済全体の成長に結びついたとは言い難い状況が続いています。特に近年では、過度な株主偏重に陥れば、人的投資や新規事業への投資、研究開発投資といった成長投資が抑制されかねないとの懸念が主要経済団体や企業から繰り返し提起されています(関西経済連合会, 2025; 日本経済団体連合会, 2025)。

これを裏付けるように、学術分野でもコーポレートガバナンス改革を通じて従業員と株主との間で分配格差が拡大したとの研究成果も報告されており(Tajima, 2024)、近年の政策が株主への分配を強化した一方で、従業員への分配を抑制してきた可能性を示唆しています。
こうした指摘を受けて、2025年11月13日の参議院予算委員会では、高市首相はコーポレートガバナンス改革について、次のように言及しています。
我が国のコーポレートガバナンス改革というのは、株主だけじゃなくて様々なステークホルダー、これに配慮しながら、持続的な成長、中長期的な企業価値の向上を図るという観点から推進してきたんですけれども、やはりこれ、企業の利益を株主への分配だけじゃなくて、人材ですね、働く方々への投資、それから新事業や研究開発の投資にも活用することは大事でございますので、コーポレートガバナンス・コードを改訂して企業が経営資源を適切に配分することを促すということで改革を進めてまいりたいと考えております。(高市, 2025)
このように、近年ではこれまでの政策からの転換が図られており、株主のみならずマルチステークホルダーのためのコーポレートガバナンスが求められます。
ここで重要なのが、企業のコーポレートガバナンスを支える情報開示制度です。特にコーポレートガバナンス改革以降、企業の情報開示制度は拡充の一途をたどり、四半期報告書が廃止された四半期開示制度を除けば、簡素化や廃止は乏しく、企業の開示負担を増大させてきました。この影響により企業の経理やIRを中心にコーポレート部門の開示疲れは深刻化しており、日本経済新聞では「開示地獄」とさえ評されるに至っています。
こうした環境下では、特に人口減少により人手不足が深刻化するコーポレート部門のリソースが枯渇し、企業の主体的・自律的な取り組みや成長投資を促進することは困難であり、これまで拡充を続けてきた情報開示制度の横断的な見直しが必要です。
このような問題意識の下、スズキ研究室では、企業の持続的かつ中長期的な発展を支えるコーポレートガバナンスの構築や情報開示制度の見直しを進めるべく、主要経済団体との協働や企業・投資家・公認会計士・政治家・官僚といった幅広いステークホルダーへのアンケート調査・インタビュー調査をもとに、政策提言を行っています。これを実効性のある提言に結びつけるには、企業・投資家・公認会計士を始めとしたステークホルダーの皆様との協働が不可欠です。
将来世代のため、もしご協働いただける場合には、こちら(お問い合わせ)よりご連絡をいただけますと幸いでございます。